コイツ、俺の嫁候補。
──ピンポーン。
バイトが終わり、片霧家までチャリを飛ばしたあたしは、ここだけ新しいインターホンを鳴らしていた。
すぐにバタバタと足音が聞こえ、ガラッと勢い良くドアが開けられる。
「縁、どーいう風の吹き回しだ」
「あは、突然来ちゃって悪いね~」
来る途中に電話で用件を伝えておいたけれど、それでも那央は突然のあたしの訪問に驚いているらしい。
怪訝そうな顔をする那央は、白Tシャツにパーカーを羽織り下はスウェットという、いかにも休日でゴロゴロしてました~って感じの服装。
さっきのシャレオツな先輩とは大違いだ……。
「全然来てくれていいんだけど、縁の方からウチに差し入れ持ってくるなんて……明日富士山噴火するんかな」
「何でよ」
まぁ、たしかにここまでしてることが自分でも不思議だけど。
……でもここへ来たら、先輩と彼女の場面を目撃して沈んでた気分が少し浮上した気がする。
超リラックスしてる那央を見たから、あたしまで気が抜けたんだな、たぶん。