コイツ、俺の嫁候補。
ビニール袋に入れたいなり寿司を手渡すと、那央は嬉しそうな笑顔を見せる。

ちょっとだけ気分転換になったし、なんとなく今は一人になりたくないけど帰るとしますか。



「じゃ、あたしはこれで──」

「ちょっと待て」



踵を返そうとすると、那央に手首を掴まれた。

振り向くと、綺麗な顔が何か企んでいそうな笑みを浮かべている。

……やな予感。



「せっかく来たんだから上がってけよ」

「遠慮します」

「おーい、縁が来たぞー」

「ちょっと!」



やんわりと拒否するあたしに構わず、那央はずんずん家の中へと入っていく。

ヤツに引っ張られるまま、仕方なく玄関でスニーカーを脱ぎ捨てて家に上がると。

居間にいたのは本を読む遼くんと、おもちゃで遊ぶ小さな女の子。



「あ、縁さんこんにちは」

「こんにちは遼くん! この子が一番下の子!?」

「はい。もうすぐ2歳になる美雨(ミウ)です」

「美雨ちゃんかぁ。カワイイ~! こんにちは」



まだ上手く喋れない美雨ちゃんは、「ちゃー」と言ってニコニコ笑っている。

こんな小さな女の子とは接したことがないから、すごく新鮮だ。

< 74 / 314 >

この作品をシェア

pagetop