コイツ、俺の嫁候補。
那央の言葉を頭の中で駆け巡らせながら硬直していると、そっと身体が離された。

そして、肩を抱いたまま至近距離であたしを見つめると、彼はにこりといつもの笑みを見せる。



「どう、心動いた?」

「……ほぇ?」



オーバーヒートしそうな頭では那央の言っている意味がすぐには理解出来ず、間抜けた声を出すあたし。



「自分の気持ちがよくわからなくなってたんだろ? だから確かめさせてやったんだよ。
今、こうされて俺に心が傾いたなら、これだけで揺らぐくらいの気持ちだったってことなんじゃない?」



あたしとは真逆で、平然とした様子で那央は言う。

つまり……あたしは試されてたってこと?

な、なんかムカつく! ていうか、それ以上に恥ずかし過ぎる!!



「こ……こんなことされたら、そりゃ誰だって動揺するでしょ! 卑怯だよ!」

「卑怯で何が悪いわけ。本気で欲しいものなら、多少汚い手を使ってでも自分のモノにするんだよ」

「本気で、欲しいモノ……?」



って、まさか。

強引さを露わにした那央は、あたしの鼻先に人差し指をくっつけ、魅惑の笑顔を浮かべる。



「やっぱり俺、嫁候補は縁がいい」



なぜ~~~!?




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