小春日和の恋
「小野くん、去年のはいいんだって。まずは今年のチョコのお礼をしていかないと。あんなにたくさん貰ってるんじゃあ、お金がかかって大変だね」

「できればお金のかからないモノがいい。小遣い、あんま無いし」

「だから、わたしのは気にしなくていいよ。まずは今年の人たちから。それで余ったらでいいから」

「余る?」

 小野くんが小首を傾げた。

「お金のかからないお返しの余りモノ」

「なんだろ?」

 小野くんの眉間に皺が寄った。

「そうだね。ホワイトデーは卒業式だし……、小野くんが身につけているもの、一つ欲しい……かな」

「日向は何が欲しい?」

「小野くんの心」

「は?」と小野くんが難しい表情になる。

「冗談だよ! 小野君が着てる学ランのボタンが欲しい」

 小野くんの視線が学ランに向く。

「これ?」

「残っていれば……の話しだけど。あえて取っておく必要はないからね。さっきも言ったけど、まずは今年の人が優先。それで余ったのがあれば、小野くんから頂くよ」

 わたしはにっこりと笑う。

 どうやら、バレンタインデーに貰うチョコの意味……は、五十嵐くんから聞いてないみたい。

 聞いていたとしても、小野くんの頭には残ってなさそう。

 バレンタインのときに貰った人へのお返しを考えるので必死みたい。

 それだけ多くの女子から貰ってるんだろうなあ。
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