小春日和の恋
 ボタンより、良いモノを貰えちゃった。小野くんの学ランを貰えるなんて。嬉しい。

 わたしは、肩にかけてもらった学ランのポケットに手を入れた。

「あ……ちょ、まっ!!」

 珍しく小野くんが声をあげて、慌てた素振りを見せた。

 ポケットの中に入れた指先が、何かの物体に触れる。

 わたしは指先に触れたモノを手の中に包み込むと、そっとポケットの外に出した。

「それは……帰ってから……と、思って」

 小野くんが左手で、顔を覆って横を向いた。若干、顔が赤くなったような気がしたけれど、もしかしたら見間違いかもしれない。

 わたしは手の中にあるモノに視線を落とす。

「これ……去年の」

 わたしが小野くんにあげた小箱!? チョコを入れて、バレンタインデーのときにあげた……。

 少し重みがある。

 わたしはゆっくりと箱を上下に動かすと、ガサガサと物が入っている音がした。

「開けても、いい?」

 私は小野くんの顔に視線を動かす。

 小野くんはまだ横を向いたまま、静かに頷いてくれる。

 わたしは指を動かして、恐る恐る箱を開けて中身を確認する。

 ぶどう、りんご、もも味の飴が3つと、手のひらサイズのメモ用紙が四つ折りで入っていた。
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