小春日和の恋
 高校2年 5月

 初夏をにおわせ、春の終わりを告げる月。

 木々の緑が深くて、木漏れ日が眩しく感じる。

 新しいクラスにも慣れ、慣れ親しんだ1年の教室が並ぶ廊下が、懐かしく感じるころ。それが5月。

 比較的新しい校舎の階段を下りて、一年生のときに使っていた教室の横を通り過ぎる。

 後輩ができた。

 今年の1年生は、とても元気だ。活気がある。

 わたしも一年生のときは、上級生たちから「元気な奴ら」とでも思われていたのかな?

 たった一年。されど一年。

 わたしも変わる。大人の階段をのぼる。

 でも……変わらない部分も残ってる。

『俺の心、日向にやる』

 ふと思い出す。小野くんからの最初で、最後の手紙。

 ラブレターと言うほどのモノじゃない。けれど……小野くんの文字が心に突き刺さったまま、抜けない。

 中学の卒業式から1年とちょっとの月日が過ぎた。あの日から、わたしは一度も小野くんとは会ってない。

 五十嵐くんとは何度も街中で会った。

 五十嵐くんと小野くんは同じ高校へと進学した。五十嵐くんはバスケ部には入らず、放課後ライフを楽しんでるって話してた。
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