小春日和の恋
 どうやら恋人探しに夢中らしい。中学は部活動に全人生をかけてて、他に目をやれなかったのが、恋人ができなかった一番の原因だと熱弁してた。

 五十嵐くんらしい考え方で、笑えた。

 小野くんは、今もバスケに没頭しているとか。

 朝、昼、晩……寝ても覚めてもバスケだらけだと、五十嵐くんが呆れた表情で話してた。

 わたしも……諦めきれてないみたい。

 体育館の前で足を止めると、キュキュっとバッシュが床に擦れてあげる悲鳴を耳にして、苦笑した。

 ボン、ボンとボールが床にはずむ音が、今日はやけに懐かしく感じるのは、きっと小野くんからの手紙を思い出したせい……。

 体育館の入口に立つわたしの足元のころりと、バスケのボールが転がってくる。

 わたしは腰をかがめると、ボールに触れた。

 諦めきれず……バスケのマネを高校生になっても続けちゃうとはね。

 いい加減、諦めないと……とは思う。踏ん切りをつけて、新しい恋に目を向けるべきなのは、わかってるけど。

「……悪い」

 喉仏にかかる低い声が、頭上から降ってくる。

 どこか懐かしい声がした気がした。

 聞き慣れてないけれど、聞き覚えのある声。でもバスケ部員とは違う。
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