小春日和の恋
 もし、小野くんに彼女がいるなら……。その人を目の当たりにすれば、わたしの心は小野くんから解放されるのかな?

 それとも……。

 わたしは振り返ると、五十嵐くんの顔を見つめる。

 五十嵐くんは首を傾げて、難しそうな表情だった。

「いやあ……マネじゃないと思う。あいつ、俺が聞いても、どんな子なのか一切話さないんだよ」

 え? 幼馴染の五十嵐くんにも話さない相手って誰だろう。

 相手の名をあかせないような恋愛をしている、とか?

「高1のときだったと思うんだけど……俺が『今年の目標は彼女を作る!!』て宣言したわけよ。そんときあいつが『作ろうとして作るもんじゃない』ってサラって言うからさ。あいつに、お前はいるのか!?って聞いたわけよ」

 フンっと五十嵐くんの鼻息が荒くなる。

 わたしもぎゅっとボールペンを強く握りしめて、五十嵐くんの次の言葉を待った。

「あいつ、なんて答えたと思う? 『俺の心をあげた』って」

 その言葉……って。

 それって、もしかして。

『俺の心、日向にやる』の文字が、くっきりと思い出される。

 私はノートとペンを五十嵐くんに渡すと、「あとお願い!!」と体育館を飛び出した。
< 28 / 46 >

この作品をシェア

pagetop