小春日和の恋
 バスケの試合が聞こえない場所まで、無我夢中で走っていく。

 階段を駆け上がり、最上階までのぼりきると、その場に蹲った。

 うそ……、どういうこと?

 小野くん、何を考えているの?

『俺の心、日向にやる』

『俺の心をあげた』

 これって同じ意味だよね?

 小野くん、わたしのことを言ったの? それとも別の人? 






 コツ、コツ、コツ……。

 ゆっくりと階段をあがってくる足音に、意識が外に向く。

 ここに蹲ってから、どれくらいの時が過ぎているのだろう。

 ぐるぐると同じ考えを脳内と心の中で、繰り返しては、答えの出ない問題で苦しんでいる。

 小野くんに直球で聞いてしまえば、きっと答えが出るのだろう。

 でも小野くんは、試合中。

 試合が終わっても、小野くんだけを呼びだして、五十嵐くんのと会話を引き出して、確認を取る……なんて行為、わたしにはできそうにない。

 だとすると、ぐるぐると考えに考えてしまう答えは闇の中に葬るしかなくて。

 葬るなら、気持ちを切り替えて、一秒でも早く何事もなかったかのように体育館に戻らないとなのに。

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