小春日和の恋
「えっと、M高の……4番で、名前は……」

 小野くん!?

「物凄い怖い顔して、こっちを睨んでて……。先輩の後ろに座ってたM高の人の胸倉を掴んで、いきなり殴ったんですよぉ!! 『お前のせいか?』って低い声で問い詰めて……。試合に勝ったのに。あの人、全然試合に出て無かったのに。『お前のせい』ってどういうことなんでしょうか?」

 北野さんが、不思議そうに首を傾げた。

 小野くんの手の甲が腫れてたのって……五十嵐くんを殴ったせい?

『お前のせい?』って、もしかしてわたしが体育館を飛び出したことを言っているの?

『暁に何か言われて体育館を飛び出したのかと思ったけど』

 小野くんの言葉を思い出す。

 殴られた五十嵐くんには悪いけど、ちょっと……ううん、すごい嬉しいかも。

 口元が緩み、わたしの頬が熱帯びてくる。

 熱くなった頬を両手で冷やしながら、わたしは後輩に悟られないようにきゅっと唇をかみしめた。










 部活を終えて、電車に乗って地元に帰ってくるころには、小野くんと約束していた時間の直前になってた。

 改札口を通り抜けると、小野くんが柱に寄りかかっているのが見えた。
< 34 / 46 >

この作品をシェア

pagetop