小春日和の恋
 さっき学校で見たときと同じジャージに身を包み、大きなスポーツバックを斜めにかけて、イヤホンを耳に入れて、何か音楽を聞いているみたいだった。

 わたしはスイカを鞄の中に入れながら、小野くんへと近寄っていく。

 わたしが小野くんの前に立つと、イヤホンを外した小野くんが「行くか」と呟いた。

「どこに?」

「帰り道に小さな公園があったろ? そこで話そう」

 小野くんはジャージのポケットに両手を突っ込むと、歩き出す。

 私も小野くんの隣に並んだ。

「五十嵐くんと仲直りしたの?」

 わたしは、ポケットに入っている小野くんの手を見つめた。

「あ……あ、まあ。もともとアレは喧嘩じゃないし」

「そう……なんだ」とわたしは頷くと、手を後ろで組んだ。

 何を話したら、いいのか。迷う。

 公園についたら、今日の話をしないと。それまでは他愛ない話をしたいと思うのに……。

 話題が見つからない。

 このまま、公園まで無言で歩くのは、心苦しいよ。
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