小春日和の恋
「中学の卒業式がもらったあの手紙……実はまだ引き摺ってるの。小野くんの……ううん、小野くんがわからなくて」

「俺が、わからない?」と小野くんが私の言葉を繰り返した。

「わからないよ。だって『俺の心を日向にやる』ってどういう意味? 確かに中3のバレンタインのときに、わたしが『小野くんの心が欲しい』って言ったよ。言ったけど……」

 わたしはぎゅっと自分の手を強く握りしめる。

 あとに続く言葉がぷっつりと消えた。何をどう言えば、小野くんにわたしの今の気持ちが伝わるだろう?

「他の人からも、小野くんの心が欲しいって言われたら、あげちゃうのかな?って」

 違う。そういう内容を話したいわけじゃ……。

 どうしたら、このモヤモヤした気持ちを小野くんに伝えられるのかな?

「わたしと小野くんの関係ってなんだろう? って思うの。わたしは、小野くんを好きなままでいいのかな? って。この気持ち、諦めなくちゃなのかな?って」

「暁からも、少し話を聞いた。試合中に話した内容を……。俺の心は、日向にしかあげてない。これから先も、日向以外にやるつもりはない」

「小野くん、それって……」

「日向と俺の関係についてだけど、俺もよくわからない。中2でチョコを貰った時、正直、俺はどう捉えていいものかわからなかった。部活のマネから貰う義理チョコと別モノだったし。告白めいたコメントがあるわけでもなかったし。」

「あ……」とわたしは声をあげて、下を向いた。
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