小春日和の恋
中学三年のバレンタインデー
「失礼しました」と小さな声で呟きながら、わたしは職員室を後にする。
ガラガラと扉を閉めて、冷たい風がふく廊下で、一回ほど身震いをした。
「よっ! 有名人っ。我が中学の誇りだ」
背後で大声がするなり、バシンっと背中を叩かれた。
振り返ると、学ラン姿の男子が二人ほど立っている。
「五十嵐くん……と、小野くん」と背後に立つ男子の名前を呼びながら、わたしの視線が下にいく。
二人の手もとには、箱がたくさん握られている。
今日はバレンタインデー。
中学最後のチャンス。女子たちの熱い想いが、男子へとぶつかっているようだ。
去年の今頃、私も……勇気を振り絞って想いをぶつけた。
わたしは視線を再度あげて、小野くんの顔をちらりと見やる。
なんの返答もないのが、「答え」だったのだろう。
視線を小野くんから、五十嵐君へと動かす。
「『有名人』だなんて……。バスケ部のエースでキャプテンだった五十嵐君のほうが『有名人』だよ。チョコ、たくさん貰ってるもの」
わたしは五十嵐君の腕のなかにある沢山のチョコの箱を指でさした。
「いや……これは、俺のじゃなかったりして」と五十嵐君が苦笑して、横に立っている小野くんを睨んでから、「全部、コイツの!!」と口を尖らせた。
「これ、全部……小野くんの!?」
わたしは目を丸くする。
「失礼しました」と小さな声で呟きながら、わたしは職員室を後にする。
ガラガラと扉を閉めて、冷たい風がふく廊下で、一回ほど身震いをした。
「よっ! 有名人っ。我が中学の誇りだ」
背後で大声がするなり、バシンっと背中を叩かれた。
振り返ると、学ラン姿の男子が二人ほど立っている。
「五十嵐くん……と、小野くん」と背後に立つ男子の名前を呼びながら、わたしの視線が下にいく。
二人の手もとには、箱がたくさん握られている。
今日はバレンタインデー。
中学最後のチャンス。女子たちの熱い想いが、男子へとぶつかっているようだ。
去年の今頃、私も……勇気を振り絞って想いをぶつけた。
わたしは視線を再度あげて、小野くんの顔をちらりと見やる。
なんの返答もないのが、「答え」だったのだろう。
視線を小野くんから、五十嵐君へと動かす。
「『有名人』だなんて……。バスケ部のエースでキャプテンだった五十嵐君のほうが『有名人』だよ。チョコ、たくさん貰ってるもの」
わたしは五十嵐君の腕のなかにある沢山のチョコの箱を指でさした。
「いや……これは、俺のじゃなかったりして」と五十嵐君が苦笑して、横に立っている小野くんを睨んでから、「全部、コイツの!!」と口を尖らせた。
「これ、全部……小野くんの!?」
わたしは目を丸くする。