小春日和の恋
「こりゃ、完全に俺ら……ハメられたパターンだよなあ?」

 列の遥か前方に見える小野君と隣にいる女子を睨んだ五十嵐君が、腕を組んだ。

 今日は小野くんとの初デート……と浮かれたのも束の間。計画はすぐに変更されて、五十嵐くんと、M高バスケのマネージャ香川 夏美さんも交えたダブルデートとなった。

 香川さんと言えば、この前の練習試合で、小野くんと妙に親しげに触れていた女子。

 五十嵐くんは、ついさっきまで香川さんが、小野くん狙いだったとは知らなかったみたい。

 がっくりと肩を落とした五十嵐くんは、観覧車に乗る列を見て、深いため息をついた。

「俺はまたあっさりと……振られたわけだな。てか、俺は良い用に使われたのかよっ!!」

 くそっと悔しそうに地面を一蹴りした五十嵐くんは、「ほんとツイてねえなあ」と呟いた。

 休日の遊園地は混んでる。

 香川さんの計画にどっぷりハマってしまっているわたしと五十嵐くんは、観覧車に並ぶ長蛇の列の最後尾に渋々二人きりで並び始める。

 前方では、香川さんが楽しそうに小野くんに話しかけているのが、人の合間から見える。

 ダブルデートでなかったら……、今頃、小野くんの隣で笑っていたのはわたしだったのに……と黒い感情が顔を出してしまう。

「ま、香川も必死なんだろうなあ」

 諦めの境地に行きついたらしい五十嵐くんが、頭の後ろに手をやって、寂しそうな表情になった。
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