小春日和の恋
「あれ、付き合ってるんだろ?」

「今は……ね。でもあの時、五十嵐くんと話をしてなかったら、小野くんときちんと話しあえなかったし。感謝してるんだ。殴られちゃったのは、申し訳ないと思うけど」

「もしかして。今日のデートは初デートだった、とか?」

「え、あ……うん。まあ」

 わたしは頬を指先で掻きながら、苦笑した。

 五十嵐くんはペチンと額を叩くと、「通りでハルの機嫌が悪くなるわけだ」と呟いた。

「香川がさ。俺を交えてダブルデートしよって話を振ってきたとき、すげー嫌そうな顔をしたんだ。『お前、もちろん断るよな』的な顔で俺を見てくるし。俺、てっきり香川が俺とデートしたくて、ハルに話をフッたと思ったからさ。強引に推し進めちゃったわけよ。ああ……失敗した。これじゃあ、中津川に飛び蹴りされても文句言えないなあ」

「え? 沙羅ちゃんに蹴られたの?」

 五十嵐くんが、恥ずかしそうにニカッと笑うと、後頭部をガシガシと掻いた。

「沙羅ちゃんとよく会ってるの?」

「……なわけねえだろ。なんだか生活リズムが似てるようで……。ばったりと出会うんだよ。んで家も近いからさ。帰り道すがら話をするわけよ。今回の話もしたらさ。無茶苦茶、怒鳴られて『馬鹿』と飛び蹴りを……」

「沙羅ちゃんらしいね」

「あいつ、女子高に通うお嬢様だろうがっ!! 男に飛び蹴りを喰らわす……って。どういう神経してんだよ」

「こういう神経よ」と背後から聞こえてくると、バシンっと良い音がした。
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