小春日和の恋
「え?」とわたしは声をあげると、音がしたほうに顔を向けた。

「沙羅ちゃん!?」

 ピンクの可愛いワンピースを着た沙羅ちゃんが、手に持っていた鞄で五十嵐くんの後頭部を殴っていた。

「心配して来てみれば……。ほら、やっぱり私の言う通りになってるじゃない。五十嵐、馬鹿じゃないの? 女の毒気にメロメロになって、和奏のデートの邪魔を思いっきりしちゃって。だからダブルデートなんてするなって言ったのに」

「沙羅ちゃん、どうして……?」

 わたしが目を丸くしていると、沙羅ちゃんがにっこりと笑って、東の方角に指をさした。

 そこには男二人、女一人が沙羅ちゃんを見つめている。どうやら、沙羅ちゃんと一緒に遊園地に来た人たちのようだ。

 五十嵐くんも、沙羅ちゃんの連れを確認するとむすっとした表情になった。

「自分だって、ダブルデートしてんじゃん。俺を責めるなよ」

「私のは、第2回合コンの続きであって、ダブルデートではございません。そちらさんは小野と和奏のデートを邪魔しに割って入ってきた即席カップルのダブルデートでしょ。ま、すでに五十嵐は振られて、撃沈コースまっしぐらみたいだけど」

「男2人と女2人で遊園地に遊びに来ること自体で、ダブルデートだろ!? なんだよ、その『第二回合コン』って。意味わかんねえし。それに男ウケ狙ってますぅ的なヒラヒラワンピを着やがって。中津川こそ馬鹿じゃねえの? ちょっと強い風が吹いたらパンツが見えそうなひ弱な生地の服を着て。それで色気を出してるつもりかよ。そんなんで引っ掛かる男なんて下ごころ丸出し野郎の最低男だったつうの」

 ムッとした沙羅ちゃんが、片眉をくいっと持ち上げると、足を踏み出して、五十嵐くんの胸ぐらを掴んだ。
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