小春日和の恋
「日向」ともう一度、小野くんに呼ばれてわたしはゆっくりと顔を動かした。

 恥ずかしさで、顔に熱をもつ。

 絶対に理解している。去年のことを確認しに来たんだ……とわかっているのに、心の隅では、理解してなければいいと願っていた。

 五十嵐くんが教えてくれなかったから、教えてほしいっていう内容なら良いけど。

 机と机の間を歩いて近づいてくる小野くんから、視線を外すと、下を向いた。

「い……五十嵐くんは? 久々に部活に顔を出すんでしょ? みんな、元気かなぁ? 部活を引退してから一度も顔を出してないから……」

 わたしは敢えて話しの的をずらそうと、会話を投げた。

 小野くんはわたしの前で足を止めると、さらに「日向」とわたしの名前を呼んだ。

「ホワイトデー、何がいい?」

「はい!?」

 わたしは小野くんの質問に、おもわす顔をあげる。

 わたしより30センチ近く背の高い小野くんは、いたって真面目な表情をしていた。

「暁から、バレンタインの日にチョコを貰ったらホワイトデーという日にお返しをするのだと今、聞いてきた。去年、日向から貰っただろ? だからお返しをしないと」

 わたしはプッと拭きだすと、「あはは」とお腹を押さえて笑いだした。
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