ワケあり!?社内恋愛
 
「……っと…」
「ほら、こっち」
「すみませ……」


朝の電車は、相変わらず混んでいて、つり革につかまれる位置にすらなかなか行けない。

ドアの真ん中に二人で立っていて、よろめくあたしを那月さんが支えてくれた。


「……」


間近で感じる、那月さんの匂い。


何度もこの腕には抱かれた。
あたしのことを求めてくれた。
好きって言葉も、2番目だけどっていう意味では言ってくれる。


でも……


いまだにキスはしてくれない。



「……どうした?」

「立ちどころが悪くて……。
 少しの間だけ、抱き着かせてください」

「……なんだそれ」



あたしの言葉に、那月さんは頭の上で軽く笑っているだけで、
抱き着いてきたあたしの腕を振り払ったりはしなかった。
 
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