ワケあり!?社内恋愛
 
那月さんと亜由美さんが、二人並んで駅の方向へと歩いている。


遠目だし、薄暗いから分からないはずなのに……


那月さんの顔は、
あたしが見たことのないほどの幸せそうな笑顔だった。


「……」


ああ、やっぱり、
あたしは亜由美さんの代わりになんかなれていなかった……。



あんなに近くにいて
あんなにあたしを求めてもらったのに


あたしは那月さんのあんな顔、見たことなんかない。



あたしには絶対にさせてあげられない顔。
彼女にしかできない顔。



もう……
好きでいるのをやめなくちゃ……。




「いい加減、
 俺のほうにも目を向けてよ」


「…っ」




あたしの体は、
突然誰かの温もりに包み込まれた。
 
 
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