ワケあり!?社内恋愛
 
この腕に甘えてしまえば確かに楽だと思った。

この人とずっと一緒に入れば、いつか本気で好きになれる日がくるかもしれないと思った自分もいた。


それでもあたしの心の中には
まだまだ那月さんという存在でほとんど占めていて


那月さんがあの時
亜由美さんを想いながらあたしの手を取ってくれたからこそ


まだまだ那月さんを想う気持ちをやめちゃいけないと思った。



バカな女だ、って思われても……。


(倉永さんの気持ちは嬉しいですっ……。
 確かに倉永さんのこと……好きになれるんじゃないかって思う自分がいるのも確かです……。

 だからこそ、こんな中途半端な気持ちのまま、逃げ込みたくないんです)



倉永さんはそんなあたしの言葉に


(分かってた)


って、なおも笑っていて……


(でも諦めないって言ったのも覚えてるよね。
 正直、今の汐莉ちゃん、隙だらけ)

(え……)

(だから、その隙に付け入るよ。
 君が俺を嫌わない限り)

(……)


もうあたしは
何も言い返せなかった。
 
< 164 / 212 >

この作品をシェア

pagetop