ワケあり!?社内恋愛
「唇にしたいのは山々だけど。
さすがにそれはフラれた相手がすることじゃないんで」
「…っ」
掻き分けられた前髪を
再び戻して、あたしの頬をさする。
その頬には、涙がつたっていて……。
「じゃあ、行ってらっしゃい。
汐莉ちゃんの好きな男のもとへ」
「………はい…。
ありがとうございますっ……」
あたしは、倉永さんに深くお辞儀をすると
そのまま背を向けて走り去った。
最後の最後は
「ごめんなさい」
とは言いたくなかった。
こんなあたしを
好きになってくれて
「ありがとう」。