桜が咲く頃~初戀~
紀子が彩未に事細かく言って聞かせている間におばぁちゃんの病院に行く準備をしていた。

『そうと決まれば彩未』



一通り話が付いた二人も慌てながら支度を始める為に立ち上がり

『そうと決まれば、彩のの洋服も買わないといけないし。おばぁちゃんの病院行く前にデパート寄らないと。香奈。香奈も随分と容器買ってないし一緒に…ね』


と紀子は独り言の様にブツブツとひっきりなしに呟いて香奈を見た

香奈は自分の姿を見下ろすと新しい洋服を買って貰えると嬉しくなった。そんな香奈の気持ちを察した彩未は香奈に楽しそう笑うとピースサインを突き出して自信満々な顔をして見せた。

あれは彩未の演技だったのだと思った香奈も彩未に右手でピースサインを出してニヤリと微笑んで見せた。

香奈は思った。本当の寂しさは多分自分より周りをどう見ているかで、深くなったり浅くなったりするものだと。決して周りが自分を見ているかでは無いと言う事。自分が周りの行動や言動を勝手に気にして勝手に1人で決めつけて寂しく自分をさせてしまっている事が自分を追い詰めてしまうのだと。


それは香奈だけが思う寂しい気持ちでは無くて。誰しもの心に必ずあると言う事



そう気が付くとおばぁちゃんや、圭亮や彩未やお母さん達が今、香奈の傍に居てくれる事は決して当たり前の様で当たり前では無い。人は1人では生きられないのだ。必ず傍に誰かが居ないと笑えないのだとも知った。







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