桜が咲く頃～初戀～

香奈は圭亮の姿を見て一瞬時間を止めて立っていると圭亮が照れくさそうな気まずそうな上目遣いで苦笑いをして『お帰り』と言って長い前髪を右手でかき上げると今度は上がってしまった前髪を白い長くて大きくて、綺麗な親指と人差し指でツマミながら降ろし整えた。


圭亮の母、百合子は常ちゃんと2人で土間におり料理を作っている。香奈は何か手伝おうと土間に急いで降りた。圭亮のその所作が余りにも綺麗で見ていると気恥しい気持ちになり圭亮からの視線から逃げたくなったのだ。


常ちゃんも百合子も2人で土間が狭いからと、もうすぐ出来るからと言って香奈を座敷に上がらせた。


『香奈ちゃん。こっち来いや。ほれ、おんちゃんの隣空いとるで』

そう言って圭亮の父、鉄郎が香奈を手招きした。香奈は鉄郎と圭亮の間にある鉄郎の右隣を見てまた身体が止まったけれど。ニコニコしながら座布団を差し出す鉄郎に負けて圭亮の右隣に座った


凄く近く圭亮の体温を感じて香奈は何も話せなくなっていた。

昨日の圭亮の『ずっとすきでした』と言った言葉が思い出されて香奈の全身に緊張が走る。


テーブルには10人前の特上の握り寿司が5人前と、4人前、彩未用にわさび抜きが1人前が桶に分かれて置かれていた。

百合子がいそいそと土間から居間にワンプレートのお皿を3枚持って上がって来て香奈と彩未の前に置いた。

それは百合子が作ったハンバーグとフルーツ入のポテトサラダだった。ポテトサラダにはリンゴ、ミカン、苺、玉葱が小さくきざまれて入っていた。百合子は最後に圭亮の前に置きながら


『このハンバーグとポテトサラダは圭亮が小さい時から大好きでねぇ』

と随分大きくなってはいるが百合子にはまだまだ子供の圭亮を自慢するかのように嬉しそうだった。その百合子を肩で押しながら圭亮は

『かぁさん。そんなん言わんでええから』


と恥ずかしそうにした。

『そんな。ほんまやないの〜香奈ちゃんハンバーグ好き？彩未ちゃんポテトサラダに苺入ってるから美味しいよ』

そう言って彩未の頭を撫でながら準備を整え鉄郎の右隣に座った。