桜が咲く頃~初戀~
常ちゃんは退院したばかりのおばぁちゃんにおばぁちゃんの畑で収穫した甘い良い香りのする紫芋のおじやと溶き卵のお吸い物と小さな土鍋に湯豆腐を作って

『紀久ちゃんこんなんで良いかね?』

そう言いながら居間に上がりおばぁちゃんに盆事差し出した。

『ええね〜美味しそうや。おおきに』


そうおばぁちゃんは嬉しそうに盆の上の料理を見て両手を合わせて頭を下げた。

常ちゃんはまた忙しそうに土間に降りると。皆にも、白ネギと豆腐にワカメのお吸い物を持って居間に上がり皆に配ると自分も常ちゃんのおじいさんの右隣に盆を部屋の隅に置いて座ってから


『今日はな。紀久ちゃんの退院お祝いやけんな。パーティや。皆、沢山食べろぅね』

と両手を合わせ合図を出した。その言葉に皆も両手を合わせて各々に好きなものから箸を伸ばした。

彩未はフルーツ入りのポテトサラダが余程気に入ったのかおかわりを欲しがり香奈が自分のを半分彩未のプレートに取り分けて乗せた。

常ちゃんは細やかにお世話をおばぁちゃんにしながら何時もみたいに大きな楽しそうな声で笑って話していた。

そうして、しばらくしてから鉄郎が


『母さん。熱燗つけてぇな』

と百合子に声をかけると百合子は嫌な顔1つせずに慣れた様子て席を立ち土間に降りて行った。


『なぁ。圭、お前も呑めるやろ一杯付き合わーか?』

と圭亮に問いかけた。圭亮は『いいよ』と頷く様子を見て百合子は土間にある食器棚の1番下の引き出しを開けて二合徳利1本と丸みのある素焼きのお猪口を2つ取り出した。

常ちゃんの旦那さんと、おじいさんは全くお酒が呑めないらしく鉄郎は1人酒を呑むのは肩身が狭く感じたのだ。


田舎の人は自分の家の様にご近所さんの家の中まで知っている見たいだ。香奈はこんな光景もなかなか暖かくて良い気がした。

< 141 / 222 >

この作品をシェア

pagetop