桜が咲く頃~初戀~
河津桜
夜も遅くなり皆が帰った後、おばぁちゃんと香奈と彩未は3人でお風呂に入った。

彩未も五右衛門風呂が気に入った様子でアニメの歌などを歌って楽しそうに湯に浸かっている

香奈はおばぁちゃんの背中を洗いながら彩未の賑やかな声に笑っていた。

『おばぁちゃん!見といてや。なぁおばぁちゃん見といてや!数かぞえるねんで』

と言いながら湯に潜りおばぁちゃんは


『ひとぉつ。ふたぁつ。みっつ・・・』

と数を数え出したとき彩未は「ぷはぁ」湯から飛び出て来て


『ちゃうねん。おばぁちゃん数はな。いち、にい、さん・・・って数えるねんで。ひとぉつ。とか言ったら何時もより時間かかるやん。もう1回』


と言って右手で右の耳の穴を塞ぎ小さなだんご鼻を左手の紅葉みたいな人差し指と親指で摘んで息を大きく吸って止めてからまた湯に潜った。

香奈は左耳の穴が塞がって無いのは大丈夫なのか?少し心配はしたのだけれどその姿はとても可愛かった。

おばぁちゃんはそれに付き合っていたが香奈が彩未を窘めると少しガッカリした様子になったもののまた楽しそうに歌を歌い始めた。

『なぁ。バァちゃん。お腹大丈夫なん?』

香奈が聞くと

『そうやねぇ。少しはチクチクするけんど。お医者が心配要らん言うとるし何ぁんも香奈は心配しんでえい。そんな心配しとったら香奈も病になるしな。ゆっくりゆっくりや。あっそれとな圭君にもお礼せんといかんな』


そう言って香奈の流す背中が気ちが良いのか


『おぉ。気持ちいいねぇ』


と言って目を細めた。その顔がとても綺麗だと香奈は思った。
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