桜が咲く頃~初戀~
香奈が桜の樹に辿り着いた時既に圭亮は来ており桜の樹迄の小道の脇に可愛らしく黄色の花を咲かせている菜の花に雪がかぶり少し寒そうに見え圭亮の周りを少し寂しそうに見せていた。

香奈の足音に気が付き振り返った圭亮の顔は気まずそうではあったけれど静かに優しさを醸し出し目を細めて微笑んで『香奈ちゃん。おはよう』そう言った。

香奈もつられて『おはよう』と呟くように返したが圭亮に近づいて行く勇気が無いままで立ちつくしていた。

そんな香奈のカチコチな緊張した雰囲気と姿を苦笑いしながら圭亮は見つめ


『コトダマ』

と呟いた。コトダマとはあれ以来2人とも会って居ないはずだった。

『コトダマ見たん?』

香奈が少し乗り出すかのように身体を圭亮に向けると圭亮は首を横に振って『見てない』と答えながら右手で手招きして香奈を傍に呼んだ。

香奈は圭亮に招かれるままに桜の樹の下にいる圭亮の傍に寄って行き圭亮が指し示す桜の樹の枝を見上げた。

『綺麗だな』

枝に降り積もった雪に木漏れ日が差し当たりキラキラしていて香奈も圭亮の言葉を真似て『綺麗や』と言った。

そして圭亮は話し出した

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