桜が咲く頃~初戀~
『香奈ちゃん。コトダマの話を知ってるよね?奇跡の話し』

そう言って圭亮は寒さに白くなった溜息をついた。その白くなった溜息が降る雪と混ざり合い溶け込む時に辺りを柔らかいフィルターで包んで幻想的に見せて綺麗だと香奈は思った。

『前にバァちゃんが話してくれた』




そう言って圭亮の見上げている桜の樹の雪の積もる枝を香奈も見上げて見た




『うん。奇跡って何やと思う?俺は突然何も無い所と時に素晴らしく良い出来事が起こる事やと思っとった。けど、バァちゃんはそうや無いって言っとった。奇跡って自分の心の中で願うとるもんが現実に叶えられるもんの事やって...。その意味がようやく分かった気がする』



そう言って圭亮はおばぁちゃんの家の土間で東京に行くと話していたあの日の話をし始めた。
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