桜が咲く頃～初戀～

『俺、もう１回大学に戻る。やりたい事とかもうどうでも良かったし考えたくも無くなっていたけど。今回、こうして香奈ちゃんに会いに帰って来て良かったと本当に思ってる。今の料理を作る仕事は好きだから多分その道には進とは思うけど。でも中途半端で終わらせてはいけない事もあるんだと思うんよ。諦めて来た事も、それは自分を信じて無かったからやと思っとる。今は。だから明後日東京戻る。あの...。香奈ちゃん？』



そこ迄話をした圭亮は自分を見上げて目から大きな涙の粒をポロポロと零し出した香奈を見て言葉を止めた。思わず抱き締めてしまいたいと思ったものの、今はそれはしてはイケナイ様な気持ちの方が勝り圭亮は香奈の頭をポンポンと柔らかく2回叩いた。


『何で泣くんな...。』

と呟いて。

その瞬間に圭亮は香奈に涙をうつされた見たいに目と鼻と心臓の奥がピリピリと痛み自分の目からも涙がゆっくり溢れ出たけれど悲しいのでは無い事は分かった。

その圭亮の切な気な優しく細める目を見て香奈は更に泣きたくなった。

『なぁ、圭亮君。気い付いてへんの？』


そう言って香奈は圭亮にさっきまで見上げていた桜の樹の枝を指指した。