桜が咲く頃~初戀~
そう思うと圭亮が明後日東京に戻るのはとても不安な気持ちにさせた。

しかし、圭亮がやりたい事を模索して見つけようとする気持ちは全力で応援しないといけない事も分かっている。

『なぁ、圭亮君。私は今も先の事を考えたり出来へん。考え無いとと思うと苦しくなるし誰の言葉も耳に入らんなるねん。気持ちが弱いのとは違うんやと思うけど。今を誰かに頼るしか無いとか変に甘えてしまってて。あかんとは思ってるねんけど。なぁ、圭亮君、夏にはまたココで会えるんかな?』

そう香奈が言った言葉に圭亮は優しく苦笑いをして何か別の言葉を探して見たけれど何にも思いつかずに


『香奈ちゃん。夏祭りには一緒に行こう』

と言った。

香奈は顔をクシャと歪めて泣きそうになって「うん」と頷くと下を向いてしまった。

『夏祭り覚えとる?』

圭亮はゆっくり下を向いた香奈の顔を覗き込んでから

『夏祭り』

と更に言った。

『うん。覚えてるで。楽しかったね』

と、香奈が言うと圭亮は

『え?あの時香奈ちゃん一言も話さんでから笑わんし。どうしたもんか緊張しとった俺は気が付かんかった。香奈ちゃん、あれ、楽しかったん?』

と少し意地悪みたいに香奈に聞いた圭亮に香奈は小さく


『ごめん』

と返してから笑って背の高い圭亮の顔に雪が舞い降りて体温ですぐに溶けて無くなるのを見つめた。
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