桜が咲く頃~初戀~
夏祭り
何だか帯が少し苦しい感じがするものの背筋がしゃんと伸びている感じが良いなぁと香奈は思った。

白地に朱色二色の花火柄の浴衣はおばぁちゃんが香奈に縫ってくれたのだ。それに、水色に蜻蛉柄の帯がよく合っていて本当に綺麗だと香奈は思った。


『香奈は浴衣がよう似合っとる。やっぱり別嬪さんや。バァの若い頃にそっくりや。アハハ』


おばぁちゃんは香奈に浴衣を着せながら何度も何度もそう言った。

『香奈、早う見せたりんか?圭君待っとるで』

香奈はそう言ったおばぁちゃんの悪戯みたいに笑う顔が可愛いとは思ったけれど、圭亮に見せるのは恥ずかしいと思いながら圭亮が待っている縁側に行った。

圭亮も鼠色に香奈と同じ右袖と半身に白地の花火柄の浴衣に濃い緑の帯を締めてモジモジしながら何処を見る訳では無い顔で座っていた。


『おぉ。圭君も浴衣よう似合っとる。いい男になっとるで』


そうおばぁちゃんが大きな声で言うものだから隣の常ちゃんが切った西瓜を竹で編んだお盆に乗せて小走りにおばぁちゃんの家の庭にニコニコしながら入って来た。

『もう、バァちゃん言わんで!』


と圭亮は面倒くさそうに言った後に香奈を見て下を向いた。何かお揃いの柄の浴衣が恥ずかしいと思ったのだ。

『ほんま。2人とも可愛ねぇ』

常ちゃんが追い討ちをかけるかのように大きな声で言うものだから2人とも目を合わせ無いように下を向いたまま縁側に座る事になった。

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