桜が咲く頃～初戀～
鉄郎の運転する車に揺られながら片道30分の街に出た2人を夏祭りがある河川敷に下ろすと運転席の窓からニコニコしながら顔をだした

村でも小さな祭りがあり村の人達と太一郎おじさんの家で飲み会がある。太一郎おじさんは村の地主だったので何かあると皆そこに集まるのだ。百合子はその会場の宴会の準備に借り出されて忙しくしていたので鉄郎が香奈と圭亮を運んで来た。


『ほんな、圭、香奈ちゃんにちゃんとしたらんといかんで。また後で母さんが来るからな』

と言って豪快に車をUターンさせて帰って行った。


ガクンガクンとつんのめった様に走りさる軽トラの後ろ姿を見送りながら2人は少し気まずい雰囲気の中河川敷に沢山出ている屋台を眺めた。


辺りからソースや、甘いカステラの美味しそうな匂いが混ざって祭りの賑わいに胸を高鳴らせた。


『香奈ちゃん。行こうか？』


そう圭亮が声をかけると香奈は『うん』と小さく応えて下駄の音を鳴らして歩き出した。
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