桜が咲く頃~初戀~
色々な屋台を見ながら何を話す訳でも無く2人はゆっくりと歩いた。

圭亮はそれでも浴衣を着た可愛い姿の香奈が隣にいてくれてるだけで幸せな気分になった。


しばらく歩いていると金魚すくいの屋台が見えた圭亮は何も話さないで歩く香奈を楽しませなければと少し焦りも感じていたので香奈に声をかけてみた。


『香奈ちゃん。金魚釣りせん?』

香奈は一瞬圭亮を見てから


『金魚すくい』


と返すと圭亮は嬉しそうにニコニコしながら


『金魚すくいや。アハハ!香奈ちゃんしよう』


と言って香奈を金魚すくいの屋台に連れて行った。そんな圭亮の嬉しそうな顔が面白いと思った香奈は少し笑いそうになったけれど、すぐ元の平静を装って圭亮の後ろをついて行った。


圭亮が屋台のおじさんに『2人』と声をかけると、おじさんは


『よ!にぃちゃんデートか?ええなぁ若いもんは。はい、2人分200円なり〜』

と言ってポイを2つ差し出した。

圭亮は「デートか?」と言われて恥ずかしいと思った時に胸の鼓動が何時もより早くてトクントクンとなる音まで聞かれるのでは無いかと冷や汗が出て来た。

「違います」とも言えずに。香奈に振り向くと屋台の電球でそうなってしまったのか?分からなかったが香奈の白い顔がほんのりと赤みを帯びていて照れているのか?とも可愛とも思って圭亮はその顔を見つめた。

< 184 / 222 >

この作品をシェア

pagetop