桜が咲く頃~初戀~
拓也
そんな事を思い出して2人は目を合わせてまた笑った。

『また、夏には帰ってくるから』

そう言って優しい目を細めて香奈を見た。


その時桜の樹の枝がガサガサと揺れて枝に積もっていた雪が2人の頭に落ちて来た。


『ウン マタ アイニキテ』

と、雪の日の風にも似た様なヒューと高い声が頭の上から聞こえたのに、2人同時に上を見上げた。

『あっ。コトダマ。見られてるとは思ってたけど、やっと機嫌直したみたいだな』

と、圭亮は笑いながら頭の上の枝にちょこんと座る小さな男の子に話しかけた。

『ボク キゲンワルク ナッテナイヨ タイクツダッタダケ』

と言ってコロコロと笑った。


そこへ

『あの?圭亮君も見えてるん?私、見えてるんやけど』


と香奈は圭亮とコトダマに視線を行ったり来たりしながら半分口を開けていた。


『うん。見えとるよ』

と、香奈に視線を戻すと圭亮はニッコリ微笑んでから。


『やっと会えたんやね?』


と言った。
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