桜が咲く頃~初戀~
そう言われた香奈は自分の両手で胸を押さえでもう1度コトダマが消えた雪の積もる桜の樹の枝を見た。

『香奈ちゃん。そろそろ帰ろ』

そう言って香奈の右手を圭亮の大きな白い左手がつつむと「ニヤリ」と笑って圭亮のダウンジャケットのポケットに突っ込んだ。

手袋をしていなかった香奈の指先はピリピリと冷えて固くなり同じく冷えて固くなった圭亮の冷たい手が触れた瞬間には痺れた感覚しかなかったからか?香奈は恥ずかしいとも何も思わないかったが。


しばらくして段々お互いの体温とポケットのふかふかした柔らかい感覚に温まりやっと香奈は自体を飲み込めたかのように下を向いて圭亮の顔が見られなくなった。

圭亮も、勇気を出したのか?『ふふ』と鼻で笑うと前髪を右手でくしゃくしゃとしながらかきあげた後、何時もの様に人差し指と親指で前髪をつまんで整えなが歩き始めた。


雪と、山道にある石コロを靴の先で飛ばしながら香奈は下を向いたまま圭亮につられて歩き出した。

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