桜が咲く頃~初戀~
『これ!彩未ちゃん。人を指で指すもんやない』

と、おばぁちゃんは言うと、男の子に向かって


『お兄ちゃんは、ヤスじい所の小枝(さえ)ちゃんの子かね?』


と、声をかけた。ヤスじいは同じ村の農協に野菜を下ろしている、おばぁちゃんの同級生だった。小枝ちゃんと、言うのはヤスじいの娘さんで38歳になる。昨年離婚して村に帰って来たのだ。


『あんた?名前なんていうん?私はな?彩未言うねん』

そう彩未が声をかけると男の子は彩未の顔をチラッと見てから


『うっせ。ブス』

と言ってまた下を向いた。


『ブスちゃうで!彩未っていってるやん。デブ』

そう彩未はおばぁちゃんの背中から周りながら男の子の前に出ると両手を腰に当てて睨みながら言った。

『こりゃ!拓也!!』

おじいさんはそんな男の子の態度を一喝すると、男の子はしょんぼりと頭を垂れて『はい』と答えた。





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