桜が咲く頃~初戀~
『拓也?って言うん?』

とあ彩未が男の子に声をかけると、項垂れて下を向いていた拓也は頭を上げて彩未を見て『そうやけど』とぶっきらぼうに言った。


『彩未ちゃん。この間はすまんかったね。雄一君から聞いてな、お詫びにきたんじゃけど。許してやってくれるかね?』

おじいさんは半ば強制的に拓也の頭をシワシワして、畑仕事のせいか黒くてがっしりしている大き手で押え付けると拓也の頭をぐいっと下げさせた


その姿を見て彩未は

『あんな。おじいちゃん彩未もな突き飛ばしてんで、拓也君おしり餅ついてな。おしりにタンコブ出来てると思うから、彩未もごめんなさい』

と言ってぺこりと頭を下げた。

『え?お尻にタンコブ?』

おじいさんは少し不思議そうな顔をして呟くと、おばあちゃんが大きな声で笑いだした。それにつられておじいさんもガハハと豪快に笑いだした。

その姿を見ていた香菜も圭亮も『ぷっ』と吹き出して笑ってしまった。なぜ笑われているのか?分からない彩未はぽかぁんとして周りを見渡し、皆が笑う声につられて『きゃははぁ』と可愛い声で笑いだした。
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