桜が咲く頃~初戀~
その圭亮の背中を眺めていた香奈は座っていた縁側から立ち上がると慌てて縁側の下に入れてあったおばあちゃんの下駄を履いて圭亮の背中を追いかけた。

『あの!あの!圭亮君。ありがとう』

そう言ってから急に立ち止まった圭亮の背の高い広い背中につんのめるように香奈はおでこからぶつかった。

『雄一。あっち向いとけ』

そう、圭亮が運転席からコチラを見ていた雄一に声をかけると、雄一はニヤリとして頷いてから急いで前を向くとハンドルを抱いてそこに顎を乗せた


それを確認した圭亮は背中にぶつかってきた香奈に振り返ると神妙な顔をして香奈を見下ろしてからそっと引き寄せて抱き締めた香奈はそんなに背丈も小さい方では無かったが。華奢な身体は圭亮にはとても小さく感じて、何だか切なくなって泣きたくなる

酒に酔っているせいかも知れないと思って溜息を深呼吸の変わりにして圭亮はゆっくり香奈から身体を離した。

『香奈ちゃん。ちゃんと毎日連絡するから。あっ、毎日連絡しても大丈夫なら?夏には帰ってくるから待っててください』

そういうと圭亮はうんうんと2回頷いてから香奈の頭に静かに手を乗せた。

そして、香奈から背を向けると車の助手席に乗り込んだ。



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