桜が咲く頃~初戀~
『紀子がとか、香奈が悪いんやない。俺が悪いんやと思ってる。ずっとな。言い訳さしてくれへんか?』

そう言ってから良幸は深い溜息を1つついて身体を拗らせ背中に立っている香奈を見上げた。そしてすぐ前を向いて桜の樹のある雪の残っあ山を見た。


『香奈が生まれた事はその12年間俺は知らんかった。紀子に対しても本当に申し訳無いと思いながら。その時家族に向き合って生活するんが必死やった。その思いから紀子を気に掛けてやる事も出来へんかったんや。気にしない様に、思い出さない様にすればする程紀子が気持ちから離れんでな。俺は家族を失ってしまったんや。1人になった俺はもう何にも考えられんくらいに空っぽな感じがした。自分のせいでこうなったにも関わらず。人のせいにしとったんやな』

そう良幸は言うと目から大きな涙をこぼし鼻をすすって左手の平で顔を撫でた。


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