桜が咲く頃~初戀~
『26になりますよ』

圭亮が少し照れくさそうに言うと大樹は左手の親指と人差し指をVにして顎に当てると


『そっか。で、何しに帰って来た?』


とまた笑いそうな顔で圭亮に聞いた。


『本当に、それ。知らないんですか?嫁さん迎えに来ましたったて』

そう言ってから圭亮は照れくさくなったのか?頭をポリポリとかくとニヤリと大樹を見て笑った。

『そっか。おめでとうな』


大樹がそう言ってるうちに村の入口に着いた、ら

圭亮がバスから降りると大樹は2年前のあの日にした様に白い手袋を着けた左手でピースサインを作って


『まぁ。兄さん頑張んなさいや』

と言った。圭亮も左手でピースサインを出して

『はい』と答えた。

バスはピーっと音と共に扉を閉めると向きを変えて元来た道を帰って行った。


『あぁ帰って来たなぁ』

そう呟いた圭亮は走り去るバスを見送りボストンバッグを左肩にヒョイと乗せると前を向いて歩き出した。

香奈が待っているだろうあの桜の樹に向かって。
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