桜が咲く頃～初戀～
食事の後おばあちゃんと一緒に五右衛門風呂に入った。2人で入っても五右衛門の釜はまだまだ余裕があった。

おばあちゃんと香奈は色んな話をした。特におばあちゃんの恋の話しは本当に興味深く色んな事を聞きたくなった。

その夜はおばあちゃんの布団の中に香奈は入り込み一緒に休んだ。湯たんぽが無くてもおばあちゃんの体温でぬくぬくして気持ちよかった。香奈は冷えた足をおばあちゃんの足の間に入れたらおばあちゃんに冷たいと言われて益々おばあちゃんの足に香奈の足を挟んだ。


香奈はとても幸せに思えてまた泣きたくなったまま眠りに落ちた。


朝早くに起きたおばあちゃんは何時ものように朝食を作っていた。包丁のトントンと聞こえる音が香奈は好きだった。暫くその音がしていたが。止まった。

香奈は何だか気になって布団から出るとおばあちゃんがいる土間の襖を開ける前にアルミのボールが落ちて響く音が激しくした。慌てて襖を開けたらそこにおばあちゃんがうずくまってお腹を押さえ冷や汗を浮かべていた。


『バァちゃんどうしたん？』

急いで近づきおばあちゃんの肩を抱き抱えた。

『胃潰瘍がまだ治っとらんのよ心配無いお薬は貰うとるしな最近またチクチクしよったんでまたお医者行かないといかんねぇ』


そう言っておばあちゃんは無理にニッコリと笑った。そして立ち上がり「ふぅ」と息をついた。

『そんな顔せんでえい。心配ないしはよ朝ご飯食べて畑に行こう。夕べは夜更かししたからなぁ』

と笑って見せたおばあちゃんの顔は何だか淋しく見えた。
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