桜が咲く頃~初戀~
桜の指輪
天気のとても良い暖かな午後になった。今日は畑の仕事もそこそこに切り上げ家でおばあちゃんはユックリと大根を細切りにして切り干しにする為にクルクルと巻いてから縁側の軒下に沢山吊るしていた。香奈もそれを興味深くおばあちゃんに教わりながらこしらえた。
昼ご飯を食べてからおばあちゃんは日課のTVを何時もの炬燵の座椅子に座り観ていた。
香奈はその間にあの桜の樹に本を持って行き地面から盛り上がった太い根の中に揺りかごのような形をした窪みを見つけると納屋から持ち出した茣蓙を引いて座った。
あれだけ遠くに感じていたこの場所は午前中におばあちゃんに教えてもらった道のりはおばぁちゃんの畑のすぐ脇の小道だと知ったので案外近いんだと不思議に思った。
桜の樹は背中に当たると冷んやりとして気持ちが良かった。そこで本を読みながら船を漕ぐ。海からは波が寄せては引きを規則正しく繰り返す音色を奏で風がと鳥たちが鳴く声、枝が擦りあい軋む音を目を閉じて聞いていると穏やかな気持ちになるのだった。
朝、おばあちゃんは香奈に言った。
『香奈は最近穏やかな優しい顔になったなぁ。バアの若い時分にソックリな別嬪さんや』
とニコニコして自分より随分背の高い位置にある香奈の顔を嬉しそうに見上げた。そんなおばあちゃんの顔は何時もと同じ優しい顔だった。
「バアちゃんマザーテレサみたいや」
香奈はそう思った。
昼ご飯を食べてからおばあちゃんは日課のTVを何時もの炬燵の座椅子に座り観ていた。
香奈はその間にあの桜の樹に本を持って行き地面から盛り上がった太い根の中に揺りかごのような形をした窪みを見つけると納屋から持ち出した茣蓙を引いて座った。
あれだけ遠くに感じていたこの場所は午前中におばあちゃんに教えてもらった道のりはおばぁちゃんの畑のすぐ脇の小道だと知ったので案外近いんだと不思議に思った。
桜の樹は背中に当たると冷んやりとして気持ちが良かった。そこで本を読みながら船を漕ぐ。海からは波が寄せては引きを規則正しく繰り返す音色を奏で風がと鳥たちが鳴く声、枝が擦りあい軋む音を目を閉じて聞いていると穏やかな気持ちになるのだった。
朝、おばあちゃんは香奈に言った。
『香奈は最近穏やかな優しい顔になったなぁ。バアの若い時分にソックリな別嬪さんや』
とニコニコして自分より随分背の高い位置にある香奈の顔を嬉しそうに見上げた。そんなおばあちゃんの顔は何時もと同じ優しい顔だった。
「バアちゃんマザーテレサみたいや」
香奈はそう思った。