桜が咲く頃~初戀~
バス
香奈の様子が落ち着いた頃、圭亮は居間にある電話台の引き出しを開けてバスの時刻表を探した。案外簡単に見つける事が出来た。

調べると後35分で本日2度目で最終の上りのバスが今朝圭亮の降りたバス停まで来る。

『香奈ちゃん、、落ち着いた?』

そう圭亮が香奈の顔を覗き込むようにして聞くと香奈は少し気まずそうに頷いた。

そんな香奈の姿を見て圭亮はさっきの軽率な行動を少し悔やんだ。

『大丈夫。バァちゃん所ついて来てくれるん?』

香奈は申し訳無いかの様に目をしばしばさせて俯いままんま圭亮に聞いた。

『うん。もうすぐバスが来るから香奈ちゃん上着着て準備して』

そう言って香奈の肩を支えてゆっくり立ち上がらせた。

『俺ついてるし心配せんでえいよ』

そう言った圭亮を暫く見つめていたがゆっくり向きを変えて香奈は奥の部屋に入って行った。


すぐに香奈は右手に桜色の丸いがま口財布とこの付近では繋がる事の無い携帯電話を持って出て来た。

それらを茶色のフリースのパーカーの両方のポケットに押し込むと土間に降りながらアディダスの白いスニーカーを右足から履いた。

この時、少しバランスを崩した香奈の肩を圭亮は何も言わずに支え。

『香奈ちゃん大丈夫かえ?まだ顔色悪い見たいやし』

そう言うと圭亮は香奈のスニーカーの紐をしゃがんで結んだ。


『うん大丈夫やで。私な何でもすぐに悪い方へ考えが飛ぶんよ。分かってるねんけど考えても何にもでけへんし何にもならんて事』

香奈は圭亮が器用に香奈のスニーカーの紐を結ぶ大きいけど細くて長い綺麗な白い指を見つめていた。

『香奈ちゃん行こう』

靴紐を結び終えた圭亮は香奈の右手をしっかり握るとバス停に向かって歩き出した。


まだ間に合う。





< 48 / 222 >

この作品をシェア

pagetop