桜が咲く頃~初戀~
隠れんぼ
『お母さん。ただいまぁ~』

圭亮は保育園の送迎バスから元気よく飛び降りると母、川嶋百合子の元へ跳ねるように駆け寄り抱きついた。

『お帰りぃ。今日の夜ご飯はなぁにかな?』

百合子が圭亮を胸にギュッと抱きしめて優しく笑顔で聞いた。

『うんとぅ。ハンバーグ』

圭亮は考えないでもすぐに分かったのだけども百合子がそう聞いて来る時は何時もハンバーグで少し考えた振りをして答えて上げるとものすごく圭亮の大好きな笑顔になるからだ。


『圭。お母さんのお手伝いしてくれるかな?』


百合子が聞くと圭亮は繋いだ手をすっと離して百合子を見上げて言った。

『お母さん。僕ね雄一君と遊ぶ約束したんだけど行ったらいかん?』


百合子は隣に住む秋吉さん家の雄一君となら構わないと言った後で。

『圭、お約束してよ。ご飯までにはちゃんと帰って来るって』

この時百合子は何時も家の周りが遊び場所になっているので心配は全くしていなかった。

圭亮は1度家に入ると保育園の鞄を自分の部屋に掘り投げて入れ。そして跳ぶように隣の雄一の家に向かった。

百合子はそんな圭亮の姿を微笑みながら見送ると外の庭に干してある洗濯物を取り込み始めた。


まだ圭亮は隣の庭に見えていた。
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