桜が咲く頃~初戀~
3人で過ごす時間の中で少しではあったけれど香奈は自分を見つけられそうな気持ちになっていた。

そうすると、おばぁちゃんのあの日大阪の家に香奈を迎えに来た日が思い出された。


『なぁんも心配せんでいい』

そのおばぁちゃんの言葉に香奈は気持ちを委ね、おばぁちゃんについて行くしか無い事を、項垂れた気持ちで思った事を

『ねーお姉ちゃんてば!お姉ちゃん!!』

彩未の可愛らしい高い声が香奈の耳にふと届き我に返った。


『ん?』

彩未は焦れったそうにもじもじしながら香奈を見ていた。

それを、微笑ましく目を細めながら見ていた圭亮が優しく頷くと。

『彩未ちゃん、屋上で遊びたいんだって』

と、言いながら彩未の頭を3回ポンポンと白くて細く長い綺麗な人差し指で柔らかく叩いた

『俺も、遊びたいな〜』

と照れくさそうに笑って言った圭亮のその顔は幼い頃のまんまで、香奈は目を逸らした。

『いいよ、遊んで来よ』

それだけ言うと香奈はテーブルの上のゴミを片付け始めた。

『やったー!』

彩未はそう叫んで1度飛び跳ねると圭亮に向かってハイタッチをした。

彩未と、圭亮のそんな重なり合う楽しそうな声が香奈は嬉しいと思った。


デパートで遊んだのは何時だったか?


香奈は思い出を探した。



「生命より大切にしている物」

それが、颯太にとって桜の鈴の根付なら


香奈には何があるんだろ?

そんな事を考えながら。





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