少年少女の旧校舎団(仮名)
――暑い・・・
あと7分もあれば、容易に教室へと入れるだろう。
あの後、母が謎の才能を発揮して私の髪を1分程でセットし終え、父のバイクに跨り二人乗りという恐ろしいことをやってのけた。
そうそう、お母さんって昔暴走族だったらしいんだ・・・バイクの上で聞いた・・・
原付とかの免許持ってるんだろうなぁ・・・あと自動二輪??
下駄箱の中から、少し汚れてきた上履きを取り出す。
この学校は、古い割に下駄箱が真新しい。
どうやら私達の入学に合わせて校長が作ってくれたものらしいのだが、そんなものはいいからさっさとクーラー入れろというのが本音。
これは余談なのだが、
古い下駄箱は、私達の先輩である只今高1の先輩達が卒業式前日にぶっ壊したらしい。
先生方はご立腹だったろうが、私達にとってはもう伝説の話となっている。
いやぁ、おかげさまで下駄箱は新品です
「あ、愁也おはよう!!」
「ん。」
「愁也もおはようって言ったらどうなの!?」
「・・・おはよ」
「愁也おはよう!!!」
というくだらない会話が聞こえてきた階段。
愁也・・・ということは、100%あいつだ。
なんか今日は運が悪いな・・・
愁也に声をかけている明るい方が、確か市川瞬太。
前髪が短くおでこが見えているが、彼に好意を持つ女子としてはそこが良いのだそうだ。
そして、この学校の中で桐生愁也とまともに会話ができるのは、彼含め二人だけ。
相当貴重な人材である。
階段を登りきってみると、向こうもこちらに気が付いたようで
「あ、津島さん?おはよう!!」
と声を掛けてきた。
桐生くんはこっちを見ているだけで、口を開こうとはしない。
・・・なんだ、性格の悪い奴め。
お前と市川を題材に薄い本書いて学校中にばらまいてやろうか??おっ??
「・・・あいつ悪いこと考えてる」
「愁也、挨拶」
「・・・やだ」
「やだなぁ愁也ってば、俺だけに挨拶してくれるなんてもしかしてツンデ」
「おはよ、津島双葉・・・さ、ん??」
・・・流石、桐生くんの使い方をマスターしていらっしゃる。
こちらも軽く会釈で返し、教室へ逃げ込んだ。
あの市川とかいうやつ、桐生How to本でも書いたらどうなんだ・・・
私の薄い本より確実に売れるだろう
・・・いやいや、薄い本なんて書いたことないけど。
「愁也ー、あのタイミングはひどくね?」
「・・・教室行かなきゃ」
「あ、そっか。じゃーね!!」