ストレイ・キャット☆シュ-ティング・スタ-
 あなたは重くない。

 あなたは重病ではない。

 あなたの障害は大きくない。

 あなたは……。


 きっと、みんなはそう思っているのだろう。しかし、ぼくの見えないぼく自身のこころの中には様々な思いと、いくつもの気持ちが溢れかえろうとしていたのだ。



 その日の夜、ある夢にぼくはうなされていた。久し振りに見る夢。


「おぇぇ、ゲッ、ううっ……」

 激しい頭痛に連続する嘔吐。一回、二回と止まらない。幼いころ、学校関係者が作った野球チ−ムに所属していた。活動は主に休日。好きで入部したクラブではあったが、やはりぼくも遊びたい盛りだ。一週間にたったひとつの休日を犠牲にしてまでは、やりたくなかったのか、休日前になると決まってやって来る頭痛と嘔吐。尋常な辛さが一晩中続く。五月病みたいなものだと誰もが、ぼく自身ですらそう思っていた。
 ギリギリと襲う激痛。身体から全ての水分を放出するかのような嘔吐の連続。ぼくは一晩中トイレの前で苦しんでいた。五月病だと思っていたんだ。つい最近までは……。しかし本当はこの時期に異変が起こっていたんだと、今になって思った。このころにぼくの身体が壊れていったのだ。脳が崩れていく……。そんなのわかんないよ! 普通。


「はっ」

 目が覚めるとパジャマは汗で酷く濡れていた。自分の人生が大きく変わっていく。当時のぼくは、そんなこと思ってもみなかった。

 この身体と判ってから、幾度かみた夢。久し振りに見た。その辛かった思い出は身体に染み付いたまま、汚れたまま一生拭えないのだろうか。


 星の無い夜が明ける。
< 10 / 103 >

この作品をシェア

pagetop