ストレイ・キャット☆シュ-ティング・スタ-
 見事なまでに歪なあまたの中。異常な写真ではあるが、内側からの圧と、外側からの圧が奇跡的に均一で、正常な人間と何等変わりないという。問題は、素人のぼくたちでは解らないだろう、ちいさな奇形。鼻の形がひとそれぞれであるように、脳にもそれぞれの形がある。ぼくの場合、そのズレがひとより大きかったようだ。


 全く持って無責任な話しだ。医者にしてみれば患者はモルモットと同じで、万が一失敗したとしても、患者は医療裁判に勝てるわけでも無く、医者にとって大きな損失は無い。


 しかしぼくは命を賭けるんだ!


 重い空気に包まれた室内で、担当医は静かな声を響かせながら最後に言った。

「万全を期しますが、感染症他の事態は免れません……」


 少しくらいの不自由なら別に命を賭けなくても良かっただろうか? 最後に見た珠希の顔を思い出した。


 心臓の鼓動がエフェクタ−ペダルを命いっぱい踏み込んだように大きく歪み鳴り叫び、ストレッチャ−の上、ゆっくりと天井の景色が変わっていく。白い蛍光灯がチラチラと視界の中を流れていく。

 虚ろな意識の中で、コンベアのような機械に乗せられてオペ室に入っていく。
 医師と看護士たちが慌ただしく周りを駆けずり回る。
 バタバタと激しい足音が響き、ぼくの心臓は壊れてしまったメトロノ−ムのように、激しく動き出す。

 幾つかの声たち。

 視界が狭くなってくる。
 オペ室のライトがぼんやりとする。

 看護士に身体を押さえ付けられて、体勢が変えられる。

 微かな意識の中で最後に聞こえた声……。

「麻酔入ります」

 ぼくの視界の中に、ひと筋の星が流れた?
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