ストレイ・キャット☆シュ-ティング・スタ-
 珠希が実家に帰省したのはきっと神様の粋な計らい。


 神様がその退屈な時間を作ったのは、ぼくの身体の異変に奇跡を起こしてくれる子猫と、美しい流れ星に遭遇させるためだったのだろう。





 少しの間ではあったが、就職したてのころにひとりで暮らしていたことがあった。
 ちいさなワンル−ムマンションに必要最小限の生活用品を買い込んで暮らしていた。見えない星空を鳥小屋くらいにちいさなベランダからいつも眺めていた。そして、その当時星空についての書籍をよく読みあさった。
 夜空の星たちは、ぼくの視界から消えてしまったけれども、本の中ではうつくしい星空に流れ星まで見ることが出来る。
 部屋の中にはおもちゃのプラネタリウム。これが結構高価なもので、ウン万円もしたのだが、思い切って購入した。


 ぼくはそのころ一番星空に飢えていたのかもしれない。


「へぇ、そんな話しがあるんだ」
 書籍の中にはいろんな民話が書かれていて、たいへん興味深くぼくは読破した。

〔下界で何が起こっているのかと、神さまたちが天国の窓をちょっと開いて地上を覗いたときに、その窓の隙間から漏れ出す天国のかがり火が流れ星となって見える〕

 なんて話しはヨ−ロッパの民話。
 流れ星についての逸話はたくさんあるみたいだが、ぼくが一番興味を持った話しは、流れ星は死と結び付いているという民話だ。

〔ひと、人間はそれぞれ宇宙に自分の星を持っていて、ひとが死んでしまうと、その星も流れ星となって大宇宙に消えてしまう〕

 死んでしまうというのは、哀しい気持ちになってしまうけれども、ロマンティックだ。しかし、本当は天文学的に流れ星を見てみると、上層大気を構成している物質同士がぶつかり合って、その物質に含まれている電子たちが衝突して光りを放つとある。
「昔のひとはロマンティックだったんだ」
 部屋の明かりを消して、ちいさなデスクライトで書籍を読む。おもちゃのプラネタリウムに包まれて、そのころのぼくはそんなことを思っていた。

〔流れ星が消え去る前に、願いごとをすると叶う〕

 この話しは有名で誰もが知っている逸話だろう。当時のぼくは瞳の中に星の輝きが戻って、ふたたび流れ星を見ることが出来たなら、きっと早く身体が元に戻りますようにと祈ったことであろう。
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