ｽﾄﾚｲ･ｷｬｯﾄ☆ｼｭ-ﾃｨﾝｸﾞ･ｽﾀ-

　自宅に着くなりパソコンのパワ−をＯＮにする。アドレスを叩いてサイトにつなげる。イケナイことだとあたまで理解してはいるのだが、気持ちの方が抑えきれない。自然に動作が早くなっている。ぼくは背中に罪悪感を背負いながらサイトに登録をした。プロフィ−ルにはショ−ゴと片仮名で名乗り、正直に既婚者と書いた。

「こんなバカ正直じゃ、誰も相手にしてくれないか」
　サイトの中に進んでいく。希望相手の年齢、性別、血液型。それぞれを入力していく。

「同年代、え〜二十代から三十代……これか？」

　サイトには五つ刻みで年齢が示されている。下は十五から上は六十まで。人間はいくつになっても誰かと拘わったり、話したりしたいと言うのがわかる。年老いて醜くなってもだ。
　ぼくは二十五から三十歳の欄にチェックを入れる。もちろん性別は女性。血液型はＦｒｅｅにした。

‘東京２３区一覧’

　そう書かれたペ−ジをぼくは震える左手でクリックする。
　浮かび上がる書き込みたち。ぼくは食い入るように目を細める。

『ゆっちん。二十五歳。女性。Ｂ型。彼氏と別れて……』

『朋美。二十八歳。女性。ＯＬです。Ｂ型。暇で〜す。誰か』

　書き込み本文のひとことだけ表示されている液晶画面。ひとつ一つを目で撫でながら画面を走らせる。　　し〜んと静まったリビングル−ム。ぼくはタバコに火を点ける。メンソ−ルがのどを通り過ぎる。手が微妙に震えている。病気のせいだろうか？　なぜだか背中に緊張が走る。ぼくは目に止まったひとつの書き込みをクリックする。