ストレイ・キャット☆シュ-ティング・スタ-
 街に出ようと思い支度を始める。
 今日はいつもより暖かく気持ちがいいので一枚薄着で自宅マンションを出る。ここ上野の街は、美術館や博物館が多いので、暇つぶしに国立西洋美術館に足を向けた。ここの美術館にはモネ、ロダンなどの作品が展示されていてよく来ていた。そうそう、この美術館でたくさんの絵画を鑑賞して、不忍池まで足を延ばすというのが結婚当初、珠希とのデート・コースのひとつになっていた。
 美しい作品の数々を眺めていると、日々の鬱憤や疲れ、そしてこの不思議な身体のことなどを忘れさせてくれる。昔の偉大な画家たちのパワーがそうさせるのだろうか。確かに絵の表面から、何かしらのオーラを感じる。
 

小一時間ほど美術館で時間をつぶし、通りに出てみる。空が水彩絵の具の青色を水に一滴たらしたような青さが大きく広がっている。きっと今夜は東京の空にもプラネタリウムのような星空が現れるだろう。

「久留美ちゃん、空見上げてくれるかなぁ」

 自分には見えない星たちを久留美が見上げてくれることを祈りながら、ぼくはその場をあとにする。
 こころの動きが身体に伝わる。自分でも分かるくらいに久留美に気持ちが動いている。写真を見たからか? それとも、何か別の力が自分の気持ちをそうさせるのだろうか? 

「写真は見なければよかったかも」

 身重の妻というものが居ながら、こんなことをしている自分に天罰でも下ったのか? きっと、一週間後、ぼくは今よりも後悔していると思った。

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